レッサーパンダ帽男殺人事件①

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累犯障害者

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自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」

2001年4月30日、東京台東区の路上で、短大生だったM子さん(19歳)が包丁で数箇所刺され刺殺される事件が起こります。
白昼堂々起こった事件でもあり犯人はすぐにその場から逃走したものの事件現場からレッサーパンダの帽子と思われるものが捨てられている事から、俗にレッサーパンダ帽男殺人事件と名づけられ広く世間に知られる事となりました。

現場近くで動物のぬいぐるみを頭に載せた男レッサーパンダのような帽子を被った男が何度も目撃されていたことから、捜査機関はこの男を容疑者とみて捜査を開始し、その後事件の容疑者として逮捕されたのが山口誠です。
彼は犯行後、都内の駅構内などで野宿してもののJR東京駅周辺で作業員を集める業者に声を掛けられ、埼玉県新座市の建設会社から代々木の工事現場に派遣され、コバヤシという偽名で働いていたようです。会社関係者が似顔絵に似た男がいると埼玉県警所沢署に出向いて情報提供を行い、逮捕に結びついたようです。

当初は白昼堂々、町の中で若い女性が包丁で刺殺されるという凶悪な犯行と犯人がレッサーパンダの帽子を被っている異様さから、新聞やTVも大きく取り上げ報道も過熱していきますが、唐突にそれら一連の報道は止むことになります。
それは山口誠が知的障害を抱えている事、自閉傾向があることから高等養護学校を卒業している事が分かったからです。

逮捕から一週間が経過した後に新聞・TVでは報道されなかったものの週刊誌により容疑者の過去が部分的に明らかになります。以下「週刊新潮」の記事を引用。(累犯障害者より)
「生来、知能が遅れ気味だった。小中は健常者の学校に通っていたものの高校は札幌の高等養護学校に通っている。IQは49程度、知能は小3レベル。文章を書かせても平仮名ばかりで「お」と「を」「わ」と「は」の区別もつかないのだそうだ」

管理人は当時25歳くらいだと思いますが、まだTVは当時見ていたと思うのですがこの事件をリアルタイムで知る事はありませんでした。それというのも当時勤めていた会社が俗に言うブラック企業で仕事は多忙を極め終電で自宅に帰り死んだように寝るだけの生活が続いていた事もありますが、新聞はおろかTVを見る時間もありませんでしたので。
この事件の詳細を知ったのはおそらく事件からかなり時間の経過した後にネットで知ったのだと思いますが、障害者が関与していたこの事件のことを知ったときは正直またキチガイの犯行かよ・・・キチガイは一生豚箱にぶち込んでおけ!くらいにしか思いませんでした。

その認識が多少なりとも変わったのは山本譲司の著作「累犯障害者」とこのレッサーパンダ帽男殺人事件の裁判の模様を綴った佐藤幹男の著作「自閉症裁判」を一読してからです。
ただレッサーパンダ帽男殺人事件の裁判3年以上に及ぶ計47回の公判において山口被告と検察、弁護士とのやり取りを綴った佐藤幹男の著作自閉症裁判では詳細に裁判の経過が綴られておりますが、これをもってしても山口誠がなぜ被害者となった女性を殺害するに至ったのか?その動機は残念ながら解明されていないと思います。

ちなみに以下は山口が被害女性を殺害する動機として検察が述べているものです。
被害女性M子さんはブラジリアン柔術大会に参加する恋人の応援のため、徒歩で隅田公園と隣接する台東リバーサイドスポーツセンターへ向かう途中だった。その途中、地下鉄銀座線浅草駅から近くの体育館に向けて大通りを歩き、駅から500m離れた地点で襲われた。
 山口は当初「かわいいな」と目をつけていたM子さんの後ろを歩いていたが、M子さんが突然驚いた表情をして振りかえった。これにカッとなった山口はいきなりM子さんを路地へ連れ込み、両手で首を絞め、押し倒して馬乗りになった。そして持っていた包丁で、M子さんの背中や胸や腹など数回にわたって思いっきり刺して、失血死させた。この時、山口は「侮辱されたと感じた」「殺してでも自分のものにしたいと思った」と後で供述している。

これが警察での取調べに基づいて検察が裁判の中で述べている山口の殺人の動機ということですが、
そもそも山口のIQは49、知能は小学生3年程度ということのようですが、裁判の中で弁護士、検察から様々な質問を受けるものの、顔を伏せてうつむいたまま無言のままで質問に答える事もない場合も目立ち、語彙も非常に乏しく、受け答えの内容も二転三転しており、会話が成立しない事も少なくありません。
そのような中で警察の取調べに対して被害女性を殺害した動機について検察が述べたような動機をすらすらと答えたとは到底思えません。警察の取調べの中で警察がおそらくこんな感じだろう?という形で組み立てたシナリオ、筋書きだと思われますが、このような事は障害者が相手の場合よくあることのようです。

また山口は公判中包丁を被害者に向けたのは何故か?と何度も問われていますが「友達になりたかった」と繰り返し述べています。あわせて「友達になりたい人は包丁を向けたりしないのではないですか?その事は理解できますか?」と問われていますが、「分かりません」と答えています。
「自閉症裁判」では検察側と弁護側で用意した精神科医のやり取りというものもあるのですが、自閉症の定義に始まり、責任能力の有無を巡り双方の主張は対立しており、動機の解明というものはやはり難航しています。
弁護側の証人として法廷に立った岐阜大学医学部の高岡健介助教授は次のように証言しています。
「山口被告は自閉性障害等の広汎性発達障害の可能性が高い。その被告が仲良くなりたいと思って近づいた女性から想定外の抵抗を受けた。広汎性発達障害の人は急激な変化に対応できず、すぐにパニックを起こしてしまうという特徴を持っている。」   

一般論で考えて友達になりたい相手に対して包丁を向けて仲良くしようと思ったといわれても意味が分かりませんが、
それが知的障害と自閉症という障害を併せ持った人間の特徴だから理解してね。といわれてもまったく理解できません。
ただ、仮に山口が「友達になりたかった」ということについて嘘を言っているわけではなければ、それがこの自閉症という障害を持つ人間の性質であり、友達になろうと思って近づいたところ、ふと被害女性が振り向いたときに見たものが180cmを越える体格の人間がレッサーパンダの帽子を被っているという異様なものであり、常識的に考えて大抵の人間は驚きを通り越し恐怖を覚えるかもしれません。それが若い女性であればなおさらだと思いますが、その感情は表情にありありと表れていたと思われます。

その態度が精神科医の証言の通りだとすると山口にとっては想定外の対応であり、被害女性に抵抗されたと解釈した事になります。どう対応してよいか分からずにパニックを起こし包丁で刺し殺してしまった?
やっぱり意味が分かりませんが、仮にそれが障害の特徴という事であれば、山口が包丁を所持していた時点で起こるべくして起こったというしかありません。
結局のところ、わいせつ目的で犯行に及ぼうと思ったのか?友達になろうと思って近づいたのか?という動機についてはなんともいえません。
ただ、山口は1994年、函館市内の公園で、女性にモデルガンをつきつけ身体を触り金を奪おうとした事件を起こしています。この時は強制わいせつと強盗未遂の容疑で逮捕されていますが、この事件では包丁の変わりにモデルガンを使用して女性を脅し実際に体を触り金を奪おうとしている事実があります。
この前科がなければ友達になろうとしたというのは精神科医の言うとおり本当なのかもしれないと思えなくもないのですが、信憑性にかける気がします。
いずれにしても被害者の女性とその遺族からしたら動機がわいせつ目的であろうが友達になりたかっただろうが、殺害される理由としてはどうでもよい話だと思います。もちろん、何故そのような凶行に及んだのか?動機の解明は必要な事だとは思いますが、死んだ女性が生き返るわけでもありません。

以下の内容は被害者女性の叔父に当たる方が「自閉症裁判」の著者である佐藤さんの取材に対して述べた言葉です。
「東京の姉にも言ったんだけれども、Mちゃん(被害女性)は地雷を踏んでしまったんだと私は思う。これは事故ではないし、まして運命でもないし、運命だったとも思いたくない。地雷さえそこになければ防げたことだった。私はそう思っている。
本物の地雷がそこにあったらどうする。地雷だったら、撤去する。撤去して抹消するよな」

このように被害者の遺族がその心境を赤裸々に語るという話は聞こえてくる事はありません。
ましてや加害者が障害者である場合何を言ってもマスコミに面白おかしく書かれ障害者団体に叩かれる事は目に見えているからです。それでもあえて作者の取材に答えたのはこのような悲劇を二度と起こして欲しくないという気持ちの表れである事はいうまでもありません。
個人的には、この被害者の叔父が語るように障害者が犯した犯罪を地雷に例えたのは、語弊はあると思いますがうまい表現だと思います。被害者遺族の叔父がいいたかったのは、犯罪を犯した障害者を地雷に例え、そもそもいつ犯罪を犯すか分からない人間を放置するな!社会秩序を維持するためには地雷のような人間を抹消するしかない。施設なり病院になり一生隔離しておけばこのような事件はそもそも起こらなかったという事だと思います。

例えば山にどんぐり取りに入った女性が突然忍び寄ってきた熊に襲われて殺害されるというのは不可抗力というしかありません。
ですが、白昼堂々街中でこのように包丁で刺し殺されるというのは不可抗力とは思えません。
それこそ街中に突然動物園から逃げ出した熊やチンパンジーが徘徊しているという分かりやすい状況であれば誰でも至近距離で動物を見かけたら、その瞬間走って逃げることと思いますが、相手はぱっとみ人間です。ですが凶器と狂気を帯びた人間です。
まさにいつ周囲の人間に襲い掛かるか分からない凶暴な大人のチンパンジーが人間の皮を被って町に潜伏しているようなものです。
このような場合、犯行を予測する事も事前に逃げる事も困難であり、標的にされたが最後というしかないです。
そのような人間を地雷に例え地雷の撤去をするのは当然だという被害者遺族の叔父の言葉は正論だと思います。

ただ、山口の犯した犯行は決して許す事のできないものですが、「累犯障害者」と「自閉症裁判」を読み山口誠の生い立ちというものを知ると、彼と彼を取り巻く家庭環境はは相当に悲惨な状態であり複雑な心境になります。
この殺人事件はもちろん知的障害と自閉症という障害を併せ持った人間特有の特徴から起こったのは間違いないと思われますが、それとあわせて彼の特異な家庭環境と生い立ち、その後の半生を抜きにしては説明する事はできないと思われるからです。

レッサーパンダ帽男殺人事件②に続きます。
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