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考察 クレシーの戦い

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さて、クロスボウとそれ以外の弓、はたして実戦における集団戦闘ではどちらが強いのか?
前々から興味のあったことなんですが、実際にあった戦史からそれを検証してみようと思います。
クレシーの戦いというのは俗に言うフランス100年戦争における戦闘の中でも、有名な戦いでイングランド軍率いるロングボウ部隊とフランス軍のジェノヴァ傭兵のクロスボウ部隊が、緒戦において激突しておりこれを考察の材料にしてみたいと思います。


クレシーの戦い(英: Battle of Crécy)は、1346年8月26日に百年戦争の一環としてフランス北部、港町カレーの南にあるクレシー=アン=ポンティユー近郊で行われた戦い。

背景
1340年6月23日にスロイスの海戦で勝利したイングランドだが、フランドル上陸後はフランス軍が大規模な会戦を避けたために、それ以上の戦果は挙げられず2年間の休戦をした。その間にブルターニュ継承戦争が始まり、両者の代理戦争の様相を示したが、1345年にエドワード3世は戦争を再開しアキテーヌにダービー伯ヘンリー率いる軍勢を送った。
1346年には自ら兵を率いて手薄になっていたノルマンディーに上陸し、カーン等を攻略した後、パリ近くまで侵攻した。しかしフィリップ6世はアキテーヌからも兵を呼び返しサンドニに大軍を集結しつつあった。
これに気づいたエドワード3世はフランドルに撤退するため北上を開始した。フランス軍はこれを追ったが、イングランド軍は浅瀬を防衛していたフランス分隊を撃破しソンム川を越えることに成功し、戦闘に有利な地形であるクレシーでフランス軍を待ち受けた。急ぎ追いかけてきたフィリップ6世は敵が待ち構えているのを見て、休息し翌朝の戦闘を考えたが、大軍のため統制が取れず混乱が生じ始めたため当日の戦闘を決意した。

経過
イングランド軍の作戦
イングランド軍のロングボウを装備した弓兵の活用は、バノックバーンの戦いでの手痛い敗戦を経て、スコットランド独立戦争の中で急速に発展していた。イングランド軍の戦術の骨子は、戦闘力の高い下馬騎士と熟練した弓兵の連携にあった。8月26日の朝、イングランド軍はクレシー村近郊の低い山に陣地を構えた。イングランド軍は中央に下馬騎士の部隊を配置し、エドワード黒太子がそのうち一隊を受け持った。さらに、緩やかな斜面にそって逆V字型になるように両翼にロングボウ部隊を配置し、打たれ弱い彼らに対する騎兵の突撃を防ぐために穴を掘り、杭を打ちたてた。エドワード3世自身は後方に陣を構え、風車を指令所とした。

フランス軍の到着
昼過ぎに戦場にフィリップ6世率いるフランス軍が到着。フランス軍の騎士は、自身の力への過信のために血気盛んで、統率を乱していた。フィリップ6世はこれを見て当日の戦闘開始を決意。ロングボウ部隊に対抗するためにクロスボウ部隊を前衛に配置し、その後方にフランス騎士軍(重騎兵部隊)を配置した。

戦闘
クレシーの戦いでの接近戦
まずフランス軍のジェノヴァ人の傭兵で構成されたクロスボウ部隊が射撃を行い、戦闘が開始された。対するイングランド軍は、ウェールズ人の自由農民で構成されたロングボウ部隊が応射し、射撃戦となった。フランス軍はイングランド歩兵の恐怖を煽るために、クロスボウ部隊の攻撃に合わせて楽器を打ち鳴らしたが、その目論見は脆くも崩れ去った。本来、直接照準における水平射撃では射程、威力、命中精度に勝るクロスボウであったが、上向きの射撃となったことで、効果が大きく減殺された。一方のロングボウ部隊は上方からの射撃であり、地理上の優位があった。
また、エドワード1世の時代より時間をかけて鍛え上げられてきたロングボウ部隊は練度も高く、クロスボウに比べて扱いの難しいロングボウを完璧に使いこなしていた。ロングボウは間接照準で上方に向かって打ち上げることにより射程の点でクロスボウに勝った。また1分間に1、2発程度しか発射できないクロスボウと、1分間に6 - 10発と速射性能で大きくまさるロングボウとの差は明白で、クロスボウ部隊は散々に打ち負かされた。 また一説には、フランス軍が出撃準備の整っていないクロスボウ部隊を強制的に(脅して)出撃させ、そのため大盾で身を隠すことの出来ないクロスボウ部隊はロンクボウの一斉射撃に混乱し、崩壊したとも言われる。
劣勢となったフランス軍だったが、怯むことなく重騎兵部隊による突撃戦術を敢行する。退却しようとしていたクロスボウ部隊は後方から迫った味方の騎士に薙ぎ払われ、踏み潰された。自然の傾斜と人工の障害、そして雨による不安定な地盤によって重騎兵部隊の進行は妨げられ、その突撃の威力は減少した。ある者はロングボウに貫かれ、ある者は落馬して圧死し、それでもなおフランス軍は幾度となく突撃を繰り返し、正面の歩兵部隊に猛攻を仕掛けるが、イングランド軍の陣形を崩すことができず、両側面から矢を射掛けられて負傷者が続出した。夕暮れになってついにフィリップ6世は自軍の退却を命じ、クレシーの戦いは終結した。

考察
まず最初にイングランド軍が使用している弓は大型のロングボウといわれるもので、
その大きさは120cmから180cmと大きく、基本的な構造としては全時代を通していわゆる単弓であり、イチイの木から作られていたが、表皮側が固く髄側がしなやかであった事から、複合弓程ではないにしても似た性質を持っていたとのことです。
そしてドローウェイトは一説には実に70kgに達する強力なものだそうで、
最大射程は300m、有効射程距離は150mほどに達する模様。
射手の兵力は2000強といったところ。

対してジェノヴァ傭兵のクロスボウ部隊。
使用されているドローウェイトは不明ですが、
分厚いプレートメイルを貫通するほどの威力を持っていたことから類推することができるかと。
最大射程500m、有効射程距離は100mといったところ。
ここでいう有効射程距離は実際に人間を殺傷する能力を有する射程距離になります。
射手の数は6000強。

ジェノヴァ傭兵からの射撃により戦闘が開始されますが
イングランド軍に対し丘の上すなわち水平射撃ではなく上方に向かって矢を撃ちこむ必要があり
クロスボウの矢は太く短いため矢羽も短く水平射撃には効果を発揮するものの、遠距離における斜め45度の射撃により、
矢の威力は大きく減衰し本来の威力、精度を発揮する事ができず、ほとんど効果をあげることはできなかった模様。
イングランド軍は小高い丘の上に陣を張っており、馬防柵と堀で防護、
フランス軍に対して斜め45度の角度で矢を射撃することにより、重力が加味され、
矢の威力は加速度的に増し、ジェノヴァ傭兵の着ている鎖帷子を容赦なく貫通し兵はばたばたと倒れて生きます。
なんでもジェノヴァ傭兵は準備が整わない状態で戦闘を開始せざる終えなかったようで、
鎖帷子を着ている人間は少数だったのかもしれません。
大半はただの洋服のまま、防護用の盾を前面に用意することもできずに射撃せざる終えない状態だったと推測されます。
また射撃される矢の数はクロスボウが1分間に1発から2発、よくて3発程度に対し、ロングボウ部隊は6発から10発。
2000の射手からそれだけの矢がつるべ打ちにされるのだから、たまりません。
数に勝るジェノヴァ傭兵を散々にたたき伏せ、瞬く間に壊滅することに・・・

このクレシーの戦いはイングランド軍が丘の上に陣を張っている事も大きいため、
本来水平射撃により威力、精度を発揮できるクロスボウが斜め45度の角度で射撃せざる終えず、
威力が減衰し本来の威力を出す事ができなかったのが大きいと思われます。
クロスボウの矢は太く短く矢羽も相対的に短いためこのような条件下では不利ですね。

ただ仮にイングランド軍が平地に陣を張っていて互いに防護用の盾で防護して、
距離100m程度で撃ち合っていたとしたらどうなっていたでしょうか?
射手の数は3倍の開きがありますが1分間に射撃できる能力はイングランド軍が4倍ちかいことから、
面白いことになりそうではありますが、結局のところロングボウの圧勝だったかもしれませんね。
なによりイングランド軍の使用しているロングボウは重さじつに70kg。
それが本当だとしたら並みの筋力ではありません。
150ポンドのクロスボウと同等の弦を引ききるということが並みの筋力で可能とは思えません。
このロングボウとそれをたくみに使いこなす射手を2000弱揃えたこのときのイングランド軍はチートのようなもの。
地の利とあわせてフランス軍の不手際を無しにしても勝利して当然かもしれません。

射手の数が1000単位にまで達する部隊同士の野戦での撃ちあいになると、
クロスボウの本来のメリットは大きく失われると思われます。
ただそうはいっても、ロングボウは弦は重く、大きいためそれを使用するための筋力、錬度を常に維持する必要があり、
弓の初期コストは低いものの錬度を維持するコストという意味でいうと高い維持費が必要になると思います。
その点、クロスボウは当時は作成するのに何処ででも作成できたわけではないようで、
一部の工房に限られた事もあるそうで、そのコストは単弓に比べるとはるかに割高なんだそうです。
ただ扱いははるかに容易で、弦を掛ける際の筋力自体も鐙や滑車などを利用する事で最小限に抑える事ができ、
初期コストは高いものの射手の錬度の維持ということでいえばコストは安くついたものと思われます。

結論的にいえば、簡単に優劣をつけることは難しいと思いますが・・・
射手の数1000単位同士の戦闘という事でいうと、たとえ平地での戦闘だとしてもロングボウに軍配が上がるものと思われますが、防御用の盾で防護しているため前方から飛んでくる矢も脅威ですが、
斜め上方から飛んでくる矢はそれ以上に脅威だと思います。
1分間に射撃できる矢の数も3倍から4倍違うため、熟練した兵士同士での戦闘であったとしても、
クロスボウの優位性を野戦において発揮する事は難しそうです。
防護用の木製の盾も簡単に貫通するようですし、
盾とあわせて塹壕でも掘って完全に身をかくすといったことをしないと、
なかなか難しいのかもしれません。
集団戦においてはロングボウの圧勝になるんでしょうか?

やはり、攻城戦であるとか、城の防衛戦であるとかでその精度をいかしピンポイントで狙い敵の兵士を、
狙う事ができる場合においてクロスボウの強みを最大限に発揮できるものと思います。
当時の威力という事で言えば頑丈な板金鎧、プレートメイルですね。
これを容易に貫通する事ができるほど強力なものを使っていたそうですので。
敵兵士からすれば板金鎧を容易に貫通するクロスボウを持った射手って怖すぎますからね。
ただ威力、精度が高いとはいえ万能選手ではないので、その真価を発揮できるようにするためには、
シチュエーションを選ぶようですね。

まあ、なんと申しますか、このような議論だとどうしても二者択一的にどちらが強いという議論になりがちですが、
両者の長所、短所をよく理解したうえで、クロスボウとロングボウ双方を同時に運用する事ができれば、
間違いなく最強の軍隊が当時であればできたんでしょうけどね。
見もふたもない結論ですけど。/^o^\

イングランド軍の敷いた騎兵の突撃を馬防柵と堀で防ぐというのは当時としては画期的なものだったと思われます。
馬防柵で騎兵の突撃を防ぎつつ2000のロングボウ部隊で毎分10発の射撃とか、
それこそ雨のように矢がふりそそぐんでしょうし。
馬のみなさんも大変な時代ですわ。

ただ軍隊というのは存在するだけでとかく金がかかります。
武器等の装備、食料、矢、錬度を維持するための訓練など、維持する事自体が金食い虫のようなもの。
初期費用のかかるクロスボウと維持コストのかかるロングボウ。
その両方を同時に運用する事が可能な財力を有する国というのは、
それこそ地面から無尽蔵に石油でも出ない限り難しいのでしょうね。

いづれにしてもクレシーの戦いで射撃戦の後フランス軍は雨が降った後抜かるんだ地面の中で、
丘の上に突撃を敢行していますので、騎兵の威力は損なわれたかと思います。
やはり地面が乾くまで1日2日待てば結果は大きく変わっていたのかもしれません。

見方をかえてクレシーの戦いもイングランド軍が逆にクロスボウ部隊を使っていたら、
かなり面白くなったと思うんですけどね。
馬防柵と堀で防護している状態でフランスの重騎兵の突撃をクロスボウでどのように凌いだか?
なかなかの接戦になった事と思うので。
クロスボウだけだと射撃速度が遅いためやはり騎兵をすべて打ち落とす事はできず、
数に勝るフランス軍騎兵の接近を許しイングランド軍陣地は蹂躙されていたのかもしれません。
等と歴史のifを考えるのも楽しいものです。
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